「見て見てきょーすけくーん! これ! すごくない!?」
ハイテンションで先輩が印籠さながらにつきつけてきたのは黒いアルミ缶だった。オレンジでポップなジャック・オ・ランタンのイラストと、「これはお酒です」という定番の文章が書かれている。
「……それは」
「ハロウィン限定のカボチャチューハイだって!」
「すごく……まずそうです」
カボチャ味のお菓子は甘くておいしいが、飲み物にもあの甘みを期待するとまず地雷を踏む。去年の秋頃、相沢が学校の自販機で季節限定品のカボチャ・オ・レを買ったものの半分も飲めずに捨てていた。あまりにもまずいと騒ぐので俺も一口貰ったが、確かにカボチャを一晩つけておいた水のような味がした。まずいと聞いて飲んだ俺でもかなりの衝撃を受けたのだから、甘いだろうという予想を大いに裏切られた相沢のショックは相当だったろうと思う。
目の前のカボチャチューハイからもアレと同じ地雷のにおいがする。
「なーになになに! ノリ悪っるいなーもう! いいよー恭介くんにはあげないよー」
「先輩こそまずくても俺に押し付けないでくださいよ。大体、俺は未成年です」
べーっと子供っぽく舌を出してからプルトップを開け、一気に中身を流し込んだ。そんなギャンブルに出て大丈夫か、とこっちがびびるくらいの思いっきりっぷりである。
「……」
「どうですか?」
ごくり、と口に含んだ酒をすべて飲み下した先輩に、おそるおそる訊いてみる。吐き出さないところを見ると意外とおいしかったのだろうか。
「恭介くん飲んでみない?」
「先ほどお断りしたはずですが。マズかったんですか?」
「……カボチャをつけておいた水に炭酸いれたみたいな味がする」
「うわっ」
結局涙目で缶を押し付けてくる先輩に負けて代わりに俺が飲み干したのだが、何故かあのカボチャ・オ・レと同じようにまずかった。
やっぱりカボチャ飲料にアタリはないらしい。
「恭介くん見て見てー! カボチャワインだって!」
「手伝いませんよ? 絶対飲みませんよ俺は!」
Fin
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