「こーはいがさんたくろぉーす」
「先輩」
「せのたかいさんたくろぉーす」
「そんな替え歌うたっても何もあげませんよ」
俺の背中に寄りかかりながら有名なクリスマスソング(の、替え歌)をうたっている先輩に釘をさすと歌が止んだ。やっぱりプレゼントの催促だったか、とため息をつく。確かに後輩だし背は高い方だが、だからといって先輩のサンタクロース役を引き受ける義務はない。大体あれは恋人の歌じゃないですか、とツッコむと、「だからちゃんと『恋人』のとこは『後輩』に直したじゃん」と返された。いやそうじゃなくて、恋人同士なら自然ですけど、後輩が先輩にプレゼントをあげる必然性はどこにもないじゃないですか。
「恭介くんのけち」
「……そういう先輩は何かくれるんですか?」
「おれの胸いっぱいの愛」
「熨斗つけてお返しいたします」
「ひーどおーいぃー」
勢いよく俺の背中から離れた先輩が、同じくらいのはずみをつけてドスッと抱きついてきた。顔をぐりぐりとすりつけてくる。普段のわがままさや仕草は猫めいているけれど、こういうときはなんだか大型犬のようだ。もっとも、犬と違って言うことを聞かせるのもしつけるのも不可能だが。
「恭介くんはおれを愛してないのね……」
「何当たり前のこと言ってるんですか」
ぐらぐらと俺の体をゆする先輩とくだらないやりとりをしながら、サンタクロースがもしもいるなら、すっかり出すタイミングを失ってしまった文机の下のプレゼントを俺の代わりにこの大型犬に渡してやってください、とわりと真剣に祈った。
Fin
20091225fri.u
20091223wed.w
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