1-10 / 11-20 / 21-30 / 31-40 / 41-50

マスコミが「人魚」と呼んだひとはいま車椅子乗り陸上泳ぐ

20120820

遠からず枯れて朽ちると知りながらそれでも花を摘むぼくのエゴ

20120820

「この赤がきれい」とグレーの花指して言う君にただ黙って笑う

20120819

初恋の人の結婚不意打ちで知ったインターネットの功罪

20120819

41〜50

乗る電車一本遅くするだけで途切れる縁をやわらかく抱く

20120819

結いあげたポニーテールのおかげだね 他人のものだと首筋で知る

20120818

残念なことだが君の存在と僕の生命に関係はない

20120817

スパムだとわかっていても君の名で来たメールゆえ一応開ける

20120817

「必然」や「運命」なんて言葉とは無縁のクラゲみたいな恋さ

20120817

薄雲が星を拭った新月の夜の暗さにひとり息する

20120817

かわいいなと言われるたびつらくなるけどごまかすの造った笑顔で

20120816

ダイエット必要ないと言う代わり人気のケーキをお土産にする

20120816

ぐるぐるとすべてが周り過ぎてゆく北極星の孤独やいかに

20120816

何食べる?と訊いてもらう幸せに気づかぬ過去の哀れなおれよ

20120816

31〜40

スプラッタホラーは平気で見るくせにちょうちょ恐がる謎の感性

20120815

終電の時間はちゃんと調べてる ギリギリで乗り遅れるために

20120815

「月明」の字を見て「家族」と言う息子に月の不在を伝えかねる

20120815

名を呼ぶと首をかしげて「なに?」と訊くくせの可愛さを僕だけが知る

20120814

「まあ、二十歳おめでとさん」と呟いて線香代わりの煙草を立てる

20120814

同い年だった君がもう五歳下になった 僕だけ酒が飲めるよ

20120814

いつまでも変わらぬものなどないのだと諭されるたび仰ぐポラリス

20120814

背筋から僕を開いてくれないか 翅伸ばすのは自力でやるから

20120813

喫う人がいなくなったマルボロの残りをキスの代わりに吹かす

20120813

みずみずと果汁に光る指なめる仕草が見たくて買うネクタリン

20120813

21〜30

何一つ動かさないでおきたいが生きてる僕は立たねばならぬ

20120813

山向こう幽かに雲へ照る花火も美しいと笑む松葉杖

20120813

愛情は月々きちんと払うもの 一度止まると高くつきます

20120812

友達か恋人なのか シュレディンガー博士の観測待ってる僕ら

20120812

ぼくたちの噛み合ってない凹凸が磨り減り平らになるのはいつだ

20120812

禁煙はとっくにできてる 今はただ怒られたいがために吸ってる

20120811

流星にかける願いはただひとつ「あの子の願いが叶いませんよう」

20120811

隣家から風呂桶を置く音がする 痕のこる背に湯が流れている

20120811

ぼく一人の頃は我慢できていた涙が撫でる手にほどかれる

20120811

決め台詞探すふりしてぐずぐずとラストシーンを引き延ばしている

20120810

11〜20

膝に乗る猫がどうだと言いたげに僕を見てくる 代わってくれよ

20120810

二年前君がつけてた香水に振り向くぼくはパブロフの犬

20120809

畳み方違うTシャツ出してみて君の気配を確かめ戻す

20120809

求めれば「愛しているわ」と笑うけど自ら言ってはくれない女

20120808

「愛してよ」と乞うばかりで愛してはくれぬ男をそれでも撫でる

20120808

眉根寄せ胎児のポーズで眠る背をそっと抱くああこれが母性か

20120808

反った背の白さばかりが鮮やかで泣いていたかも思い出せない

20120807

愛を食い散らかしてきた成れの果て水を背負って石抱く女

20120807

「法的に認められた家族だね」夫婦だね、とは言えない僕ら

20120807

褒められるためにやるわけじゃないけど君の「すごい!」はまあ嬉しいね

20120807

01〜10

どこにでも二人で出かけた僕らだろ 黄泉路も一緒でよかったはずだ

20120807

自治体によって分別違うから捨てるに捨てられないこの恋が

20120806

上手い下手気にして黙る蝉もいるだろか かつての僕のようだな

20120806

シャーベットカラーが好きな君だった 黒いリボンは似合わないなあ

20120806

ひまわりやカサブランカのような恋咲かせたかったとラフレシア抱く

20120806

君と住むことにはやがて慣れたから君の不在も慣れるのだろう

20120805

喪服着たまま切り落とすセミロング せめて髪だけでも連れてって

20120805

合鍵と共に返すの忘れてた君の鼻歌と暮らしている

20120805

きょうの日が燃えて消えゆく午後六時 家路を踊るつまさき見てる

20120805

寂しくて足をつけかね焼いた茄子「帰れないだろ」帰らないでよ

20120805